| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-279 (Poster presentation)
漁業が対象とする漁獲物及び混獲された生物の数や大きさの情報を正確に記録することは、漁業資源・希少混獲生物の保護を含めた、生態系をベースにした漁業管理の上で非常に重要である。近年、これらの情報を収集するための自動的な記録手法として、漁船にカメラを取り付け、操業を記録する電子モニタリングシステム(E-monitoring system :EM)が開発された。しかし、このEMシステムは基本的に撮影した漁獲物などの映像を陸上にいるオブザーバー(調査員)が目視で判別するため、未だ効率が悪いのが現状である。EMで得られた画像を自動で処理、データ化することができれば、データ収集のさらなる効率化に寄与すると考えられる。本研究では、1)乗船したオブザーバーが収集した漁獲物の画像を用いて物体検出の深層学習を行うとともに、2)EMを用いて商業船で撮影した画像へ1)のモデルを適用し、自動種査定及び体長推定に応用できるかについて検討した。物体検出にはVGG16をベースネット層としたSingle Shot Multibox Detector (SSD) を用い、80種、10,187枚について、10,000回の学習を行った。判別精度は、0-100%まで種によって大きくばらついたが学習データサイズに強く依存しており、90枚以上学習すれば85-100%の精度を保った。mAP (検出対象の範囲の平均の精度)は、100枚以上学習した種で0.96と高精度であった。これらより、SSDモデルによる種判別及び範囲はある程度の精度を保つことが示され、その範囲を用いて、体長推定に応用できる可能性が示唆された。商業船で撮影された画像は、学習した画像の画角と近づけるため、漁獲物を上方から見下ろした画像に変換された。これより、船上の任意の位置で撮影された画像を自動で解析に有用な画角へ変換可能であることが示唆された。