| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-280 (Poster presentation)
明治・大正時代に存在した湿原の約61%が既に消失した湿地生態系の現状を把握するためには、植生調査により湿原に生育する植物を把握することがまず重要である。しかし、従来の植生調査方法では熟練が必要とされることやアクセスの制限に加え、立ち入りによる植生のかく乱もあり継続的な調査を十分に実施できていない。近年、生態系のモニタリングにカメラを搭載したUAVの利用が進んでいる。しかし、植生表面の把握のみにUAVが利用される事例が多く、下層植生の種構成を把握する従来の植生調査の代替になる手法は確立されていない。そこで、我々は2018年度からVR用カメラを搭載した UAVから生成したVR映像を用いた植生調査法の開発に取り組んでいる。これまで複数のVRカメラとUAVの検討を行い、湿原の下層植生を判別可能な詳細な画像が取得可能であることを明らかにしている(山田ほか:2019年度湿地学会)。また、機器の改良やVRカメラ搭載UAVを用いた湿原の植生調査におけるプロトコルの開発・検討を行ってきた(鈴木ほか:2019年度生態学会)。本報告では、開発した機器・プロトコルを用いた植生調査の運用試験と従来調査法とのコストや労力の比較から、UAV・VRカメラを用いた湿原の植生調査の実用可能性を検討した。植生調査用に開発した大型(Matrice600ベース)・小型(Mavic2Proベース)のUAVは通信や飛行の安定性に関して多少の課題が見られたが、植生調査に必要なVR画像を安定的・効率的に取得することができた。また、コスト・労力に関しては、従来調査法と比較して、初期投資は高価であるが、全体的なコスト・労力は従来調査法と大きな違いはないことが明らかになった。なお、VRカメラ搭載UAVを用いた植生調査と従来調査法との調査精度の比較については本学会P2-236にて発表している。本研究は科研費(18H03409)の助成を受けて実施しています。