| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-283  (Poster presentation)

人工林のシカ被害に対する捕獲の影響
Effects of harvesting on browsing damages on plantations by sika deer

*鈴木圭, 安田雅俊(森林総研九州)
*Kei K SUZUKI, Masatoshi YASUDA(FFPRI)

ニホンジカ(以下シカ)による農林業被害が問題となっていることから、シカの捕獲が全国的に実施されている。本研究では、人工林のシカ被害に対する捕獲の効果を検証するために、以下の3つの解析を実施した。1)熊本県によってほぼ同一の林分で2009~2018年にかけて毎年1回実施されたシカ被害調査の結果から、植林本数に対するシカ被害の割合を時空間的に標準化した。2)推定された被害を5キロメッシュ単位に変換し、各メッシュの増加・減少傾向を推定した。3)各メッシュの被害の増減傾向に対するシカ捕獲数の影響を評価した。目的変数を植林本数に対する被害本数、説明変数を緯経度、調査年度、それらの交互作用および林分の齢級とした一般化加法モデルを構築し、被害を標準化した結果、被害の時空間的な偏りがみられた。Mann-Kendall検定によって5キロメッシュ毎の被害の増減をみると、90メッシュが増加、51メッシュが平衡、48メッシュが減少であった。特に、県央から南東部にかけて被害は減少傾向にあった。また、その周囲では被害が平衡的であり、さらにその周囲で被害が増加する傾向にあった。各メッシュを1サンプルとして、目的変数を推定された被害傾向、説明変数の固定効果を被害調査期間のシカ捕獲個体数、ランダム効果を緯経度とした順序ロジスティック回帰モデルを構築したところ、捕獲個体数が多いメッシュほど、被害は減少する傾向にあった。したがって、積極的かつ十分なシカの捕獲は林業被害の軽減に効果的であるといえる。なお、本研究で使用したデータは、熊本県および熊本県林業研究・研修センターから提供された。


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