| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-284  (Poster presentation)

コロナ禍が人と自然の相互作用に与える影響:これまでに分かってきたこと
Impacts of the COVID-19 pandemic on human-nature interactions: pathways, evidence and implications

*曽我昌史(東京大学)
*Masashi SOGA(Univ. Tokyo)

 新型コロナウイルス感染症の大流行(コロナ禍)は、世界中の多くの地域で人々の生活様式を劇的に変化させた。これら人間の行動・活動パターンの変化とそれに伴う環境影響の変化(多くの場合、環境影響の減少)は、人と自然との関わり合い(以下、「人と自然の相互作用」)の構造・動態を劇的に変え、人間社会と生態系の双方に大きな影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、コロナ禍が人と自然の相互作用にもたらす影響については、ほとんど議論がなされていない。

 本講演では、コロナ禍が人と自然の相互作用の構造・動態に与える影響を理解するためのフレームワークを提案する。このフレームワークは、コロナ禍が人と自然の相互作用に及ぼす影響は、(1)「機会(Opportunity)の変化」、(2)「能力(Capability)の変化」、(3)「動機(Motivation)の変化」という三つの経路を介してもたらされることを示している。また本フレームワークは、コロナ禍によって引き起こされた人と自然の相互作用の変化は、自然と関わる「機会」・「能力」・「動機」に再び影響する(フィードバックが存在する)ことも示している。このことは、コロナ禍が人と自然の相互作用に与える影響は、たとえコロナ禍が収束した後でも、長期にわたって持続する可能性があることを示唆している。

 地球上に突如もたらされたコロナ禍は人間社会に多大な経済・健康・社会的被害をもたらした。しかしその一方で、コロナ禍にある現在は、人と自然の相互作用の理解を深めるための「地球規模の自然実験」とみなすこともできる。この稀有な機会を活かすことで、人と自然の相互作用の理解を深めることが出来るだろう。


日本生態学会