| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-285  (Poster presentation)

幼児向けの魚介類を使った体験型学習会による普及効果の分析
Influences on experiential learning programs using shellfish for preschool children

青木宏樹(ARU, 日本P&A専門学校), *宮崎佑介(白梅学園短期大学)
Hiroki AOKI(ARU, Nihon Pet & Animal College), *Yusuke MIYAZAKI(Shiraume Gakuen College)

 幼少期における自然体験は成人期以降の環境保全意識への影響が示唆され、近年では特に都市部の住民の自然離れと保全意識の減少も危惧されている。このような世界的な動向は幼少期における自然教育の重要性が高まっていることを示す。しかし、生物多様性保全に有効な自然教育の在り方や効果検証法については未だ確立していない。体験の刺激の強さや情報量の多さは睡眠時の夢の内容として現れるという睡眠科学の示唆に基づき、本研究では自然体験と夢の関連性について分析を行った。
 東京都西部S幼稚園の年長児2クラスを対象に魚介類を用いた体験学習会を1回ずつ開催した。当日は降園時間後に2班に分かれ、実物の魚介類に触れられる体験、及び講師が鮮魚を解説しながら解体する場面の見学を交代制で約30分間ずつ行い、最後に用いた生鮮魚介類を各家庭で調理・賞味できる内容として実施した。開催の6日前から7日後までの14日間の参加園児が見た夢の記録(スケッチ)を保護者に協力依頼し、これらをデータとして回収・分析した。
 初回のクラスでは28名、2回目のクラスでは24名の園児の参加があり、それぞれ18名と14名から夢見の記録を回収できた。一人あたりの夢見の記録は、初回0–14枚(平均4.9±0.9)、2回目0–12枚(平均3.9±0.8)であった。夢見における魚介類の出現数は体験前後で有意な差が見られなかった(Fisherの正確確率検定:初回p = 0.4、2回目:p = 0.4)。他方、両クラスの記録をプールして構築した状態空間モデルでは、夢見の総数は全体として減少傾向にあったにも関わらず、体験直後のみ魚介類の出現数は上昇傾向が見られた。実際、体験翌日の魚介類が出現した夢見は6件と最大値が記録され、また体験と夢見の出現種が合致した記録もあった。これらの結果、及び保護者や担任教諭からの聞き取り内容も踏まえると、夢見の内容は自然体験の印象が強く残った子ども達にのみ関連性がみられることが示唆された。


日本生態学会