| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-287 (Poster presentation)
博物館や様々な地域の団体,NPO,自治体などによって開催される自然観察会や総合学習などにおける野外授業は,野外で様々な生き物を発見し,ふれ合い,自然科学や保全への意識向上のきっかけとなる行事である.そして,このような観察会は研究者が少数で行う調査に対して,「たくさんの眼」による様々な生物の発見の機会であるともいえ,定性的な情報においては調査以上の成果をもたらすこともある.それらは,確実な記録を残すために,現場で「同定できる人材」もしくはよく似た種を「判別ができる人材」の存在が重要となる.滋賀県守山市の水路で2013年から継続されている自然観察会では,毎年観察会が実施されていたことで,水路の魚類相が明らかとなってきた.その矢先,道路建設に伴う水路改修工事が実施されることになったが,観察会で魚類相が把握されていたため,事前に保全策をとることができた.また,工事終了後の観察会においても魚類相の変化が少ないことが確認された.さらに,2019年にはそれまで発見されていなかった国内外来魚コクチバスが採集され,県内の平野部における初めての記録となった.このように観察会をひとつの調査と位置づけ定期的に実践すること,そしてその中で正確な同定を行ない,その情報を保管できる技術をもつ博物館との連携によって,より観察会の成果を様々な場所で活用できると考えられる.これらは,単に教育・普及・交流という目的で研究者が関わるだけではなく,調査・研究という要素も含めた参画を可能にする一つの事例ともいえるだろう.さらに定点で毎年恒例の観察会を行うことで,あくまで定性的データのみではあるが,モニタリング,そしてそれを活かした保全にも応用することができると考えられた.