| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-288 (Poster presentation)
土地利用の改変は、生物多様性に最も影響を及ぼす要因の一つである。また、土地利用の改変は、生物間相互作用に対しても影響を与えており、生態系機能を維持する上ではその影響の低減が求められる。北半球の太平洋地域において、サケ科魚類が遡上・産卵した後の死体は、陸域に多くの栄養源を供給している。特に秋季~冬季の餌資源が枯渇する時期において、サケ死体のような餌資源はその消費者の分布を大きく規定し、サケ死体とその消費者の間で相互作用が生じている。しかし、サケ遡上河川を含む多くの河川では周辺で土地利用の改変が生じており、サケ死体とその消費者との相互作用に影響を与えている可能性がある。そこで本研究では、サケ死体と消費者(腐肉食性鳥類)との関係性が周辺の土地利用により変化するかを調査した。
北海道西部の13のサケ遡上河川において18の調査地点を設定し、スポットセンサスにより腐肉食性鳥類(ワシ類(オジロワシ・オオワシ)・カラス類(ハシボソガラス・ハシブトガラス))の個体数を調査した。また、各調査地点でサケ死体数及び残存率を目視で計測し、サケ死体バイオマスを算出した。さらに、土地利用改変の指標として各調査地点周辺の市街地面積率をGISで算出した。
調査及び解析の結果、サケ死体バイオマスが増加するほど、ワシ類・カラス類の個体数は増加した。また、カラス類の個体数は、サケ死体バイオマスと市街地面積率との交互作用により説明された。したがって、サケ死体は腐肉食性鳥類の個体数に影響を与えており、一部の分類群についてはその影響は景観依存的である可能性が示唆された。