| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-290 (Poster presentation)
相利共生(異種個体間の互いに正である相互作用)の進化と維持においては、相手から一方的に利益を受ける個体(裏切り者)を排除するためのメカニズムの1つとして、自分に協力的な共生相手を選り好みするパートナー選択が考えられてきた。しかし、パートナー選択にコストがかかる場合、パートナー選択により裏切り者個体の頻度が減少する結果としてパートナー選択の利益が減少してしまうために系が不安定になり、相利共生が安定に維持されないというパラドクスが生じうることが理論的研究により明らかになっている。そこで本研究では、マメ科植物-根粒菌の系を念頭に、それぞれ2系統の宿主(パートナー選択をする・しない)および共生者(宿主に協力する・しない)からなる数理モデルにおいて、(I)各宿主個体が共生する共生者数が固定の場合と、(II)宿主個体が自分の利益を最大化するよう共生者数を調節可能な場合について、各系統の頻度の動態を解析した。(I), (II)のどちらの場合においても、宿主のパートナー選択の効率が大きく、パートナー選択のコストが小さいとき、相利共生が維持される平衡点が存在しうる。しかし、(I)ではこの平衡点は中立安定に過ぎないが、(II)では収束安定になりうる。さらに、(I)では宿主が共生者以外から得る有用物(例えば土壌中の無機窒素)が多いほど相利共生が促進されるが、(II)では逆の結果になることがわかった。