| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-298 (Poster presentation)
森林に生息する大型菌類は、多様な生活様式を通じて森林生態系の維持に貢献している。森林生態系の機能維持のためには、地域ごとに分布する大型菌類の種組成を明らかにすることが必要とされる。一方で、大型菌類の群集は季節によって異なり、標高や植生など様々な環境要因がその群集形成に影響を及ぼすことが知られる。新潟県佐渡島の北部には人為的影響の少ない豊かな森林が維持されているが、これまでに同地の大型菌類相や環境要因との関係を調べた研究はない。本研究は、佐渡島北部における大型菌類相を調査し、子実体の出現パターンと季節・標高・植生などの環境要因の関係からその特徴を考察することを目的とした。
大型菌類の種組成を調べるために、月に一度の頻度でラインセンサス法による子実体観察に基づく調査を行った。対象の登山道を地形や植生が変わる点を境に16区画に区切り、区画ごとに環境データや植生を記録した。各区画で観察された菌類の子実体は、形態観察により分類群を同定し、分類群と発生基質に基づき6種類の機能群に分類した。
調査の結果、353種の菌類の子実体が確認された。子実体の発生ピークは梅雨と晩秋の2回確認され、季節ごとに観察される種は異なった。外生菌根菌及び地上生分解菌が標高と、リター分解菌、材上生分解菌、全機能群の合計種数が林床被度とそれぞれ負の相関を示した。各区画の菌類群集はクラスター分析によって3つのグループに分けられ、種数や機能群の割合、主要な植生環境の違いから菌根菌richタイプ、腐生菌richタイプ、子実体poorタイプとして特徴付けられた。以上の結果から、佐渡島北部の森林では、低標高で林冠が閉鎖的な広葉樹林には外生菌根菌を多く含む菌類相が形成され、標高の上昇に伴い林冠が開放的なスギ林では腐生菌を主とした菌類相に変わる傾向が示された。標高が高い地域では、菌類の種数が少ないサワグルミ林も点在する特徴が見られた。