| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-02  (Poster presentation)

シジミの川下り ~タイワンシジミ成貝移動動態の解明~
XXX

*中村彰吾, 朝比奈奎人, 伊藤綾祐, 熊谷孟樹, 山本大嗣(浜松学芸高等学校)
*Shogo NAKAMURA, Keito ASAHINA, Ryosuke ITO, Haruki KUMAGAI, Taishi YAMAMOTO(Hamamatsu Gakugei High School)

本研究は、単純な河川環境下におけるタイワンシジミCorbicula fluminea成貝の移動動態を明らかにすることを目的とする。調査は、浜松市西区のコンクリート三面張の水路で行った。水路の川床には砂泥が散在しており、淡水で潮の満ち引きの影響はみられなかった。調査は、梅雨期と渇水期の2回行った。ははじめに、川床の流路30mにわたって、砂泥およびタイワンシジミをすべて除去した。次に、採集した貝殻にマーキングを施すことで、再投入地点ごとに識別した。その後、砂泥と成貝20個体を混合して、24地点に再投入した。再投入から1週間後(回収1)、2週間後(回収2)に成貝を再捕獲することで、各砂泥における残存率、移入率、移動距離を算出した。回収1では、梅雨期と渇水期の残存率には大きな差がみられなかった。しかし、回収2では、梅雨期の残存率が急激に減少しているのに対して、渇水期の漸減率は漸減に留まった。各砂泥内での残存率にも降雨の影響はみられた。回収1では梅雨期のほうが高かった。回収2では、梅雨期の移入率がほとんど変化していないのに対して、渇水期の移入率は急激に増加した。移動距離は、梅雨期のほうが平均値、中央値ともに大きかった。各砂泥内での残存率渇水期にも低下していたことから、河川の流れにより一定量の個体が流出していることが明らかになった。さらに、降雨にともなう増水により、残存率が低下した。各砂泥内での移入率は、梅雨期と渇水期のいずれも、1回目よりも2回目の回収時に移入率が高くなり、時間の経過に伴い新たな個体が移入していた。渇水期には水の流れが緩やかであるために、下流へ流される前に砂泥中に潜ることができたと考えられる。本研究によりタイワンシジミの移動動態を明らかにするうえで、貝殻へのマーキング法が有効であることが明らかになり、貝殻へのマーキング法が有効であることが明らかになり、成貝にとって生息地であり、移入個体の供給源・受け皿である砂泥が重要であることが分かった。


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