| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-03  (Poster presentation)

日本近海に生息するMicrocotylidae科単生類の分子系統学的研究
The study of Microcotylidae monogeneans in the sea around Japan

*西尾彩里, 瓦田優香, 井上愛菜(白陵中学校・高等学校)
*Ayari NISHIO, Yuka KAWARADA, Aina INOUE(Hakuryo High School)

Microcotylidae科単生類は扁形動物門に属し,主に魚類の体表・エラに寄生する宿主特異性の高い外部寄生虫である。本科単生類は,海産魚に寄生する単生類の中で最大の科であり,有用魚種への寄生や病原性のある種も報告されている。本科単生類の系統学的研究は,種の保存だけでなく新興感染症の天然水産資源集団への侵入・定着の予防につながる。しかし,単生類の体系的な分類学的研究はほとんど行われておらず,既知種についても塩基配列情報はほとんどないことから,分類学上の課題や未記載種が多く残されている。
本研究では兵庫県南部に生息する魚類を中心に単生類の形態観察による種同定とDNA解析を行い,塩基配列情報を収集した。また,以前の調査でアナハゼ類から既知種とは形質の異なる本科単生類を確認しており,単生類の宿主特異性の高さから,未記載種の可能性を視野に入れて分類学的研究を行った。
2018年12月から2020年12月にかけて,兵庫県南部を中心に日本各地で魚類を採集し,解剖により寄生虫を摘出した。採集した寄生虫は,分子系統解析及び染色標本の作製による形態観察を行った。また,他県の魚類や単生類の提供を協力者から得ることができた。
19魚種から本科Microcotyle属単生類を採取し,3種の単生類を種同定できた。そのうち,北海道近海のエゾメバルから採集した単生類は既知の本属単生類と形質が異なることから未記載種の可能性が高いと考えている。また,タケノコメバルとダイナンギンポはM.caudataの,アサヒアナハゼとキリンアナハゼはM.kasagoの新宿主であることが明らかになった。このことからこれらの2種はそれぞれ科をまたぐ7魚種,3魚種を宿主とする,宿主特異性の低い種であることが分かった。アナハゼ類を宿主としている単生類は,原記載のものより大きく,生殖孔周辺の形状が異なるため再記載の必要があると考えている。


日本生態学会