| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-06  (Poster presentation)

鹿児島県における蛾の生息域
Habitat of Moth in Kagoshima

*山田和樹(鹿児島中央高等学校)
*Kazuki YAMADA(Kagoshima Chuo High School)

鹿児島県におけるスギタニアオケンモン(ヤガ科),ブナアオシャチホコ(シャチホコガ科)の二種のガとシカの食害の関係

 近年,地域の生態系が損なわれているというような話をよく耳にする.そこで,他の昆虫に比べて生息するための条件が厳しいガに注目して,どんな種類のガが生息しているのか調べることで,地域の生態系を推測してみようと考えた.研究を進める中で,シカの食害が植生を脅かしていることを知り,シカの食害と蛾類相との関係について調べることにした.加えて,鹿児島県においては,霧島山で1996~2006年の間に県立博物館による調査が行われているが,その後,ガに注目した新たな調査は行われていないので,2006年までの調査結果と比較することも研究の目的とする. 調査する地域は霧島山の他に,紫尾山を加えた.紫尾山では過去にガに注目した調査が行われていないことが理由である.これまでの調査では,次のようなことがわかった.スギタニアオケンモン(ヤガ科)は,ブナ林の林床植物であるテンニンソウを食草としている.ブナとテンニンソウは共にシカの食害を受けており,数が減っている.スギタニアオケンモンは,今回の調査では紫尾山でのみ確認された.しかし,ブナを食草としているブナアオシャチホコ(シャチホコガ科)は霧島山,紫尾山の両方で確認された.このことから,ブナ林への食害が蛾類相に与える影響は小さく,テンニンソウなどの林床植物への食害が蛾類相に与える影響が大きいことが予想される.特に霧島山での林床植物への食害の影響は大きいのではないかと考えられる.


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