| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-08  (Poster presentation)

なぞウズムシの正体を追え~プラナリア類の分布調査からわかったこと~
Two types of Dugesia japonica found from distribution survey

*村岡日和, 板谷柊吾, 川中波, 高松遥大(三田祥雲館高校)
*Hiyori MURAOKA, Shugo ITAYA, Nami KAWANAKA, Haruto TAKAMATSU(Sanda Shounkan High School)

私たちは、日本でプラナリアの外来種が広がりつつあることに興味をもち、2017年度より三田市武庫川水系でプラナリア類の分布の調査を行っている。調査を進める中で、在来種と外来種が共存する場所が見つかり、そのような場所の在来種ナミウズムシは、在来種単独で生存している場所のものと比較し、色や大きさに異なる特徴をもつことを発見した。それらを「なぞウズムシ」と呼び、分布調査に加えて、DNA分析を取り入れ、その実態の解明を行った。
在来種単独で生存する「ナミウズムシ(黒川型)」が見つかる黒川の個体と、外来種と共存する「なぞウズムシ(内神川型)」が見つかる内神川の個体の、核遺伝子ITS領域を比較したところ、塩基配列に8%の相違があることが判明した。そこで、新たに16ヶ所から採集したナミウズムシ23個体について、PCR-RFLP法を用いて、2つの型のどちらであるかを調べたところ、「ナミウズムシ」4個体、「なぞウズムシ」15個体を判別できた。その結果、「ナミウズムシ」が見つかる川は、河床が砂利の自然状態の川、「なぞウズムシ」が見つかる川は、河床をコンクリートで固められた川や水路であることが明らかになった。
また、2年間継続して観察を続けている内神川の調査結果から、「なぞウズムシ(内神川型)」は、冬は黒っぽいが、夏になると色が薄くなり「ナミウズムシ(黒川型)」と区別がつきにくくなることがわかった。水温の変化が体色に影響するかを実験により調べた結果、「なぞウズムシ」の体色は水温によって変化するということが示唆された。
「なぞウズムシ(内神川型)」は、河床をコンクリートで固められた川や水路に多く生息する。そのような場所は、外来種が侵入していることが多い。また、水温と体色の関係は実験で検証できたが、その理由は不明である。今後も研究を続け、なぜ2つの型に分かれたのか、ナミウズムシの進化を明らかにしたいと考えている。


日本生態学会