| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-13 (Poster presentation)
熊本県熊本市の市街地近郊に、坪井川遊水地という場所がある。ここは遊水地ではあるが、遊具や陸上競技用のトラックなども整備されており、人による利用も盛んである。その一方で、南北方向に長くヨシ原があり、池や河川などの環境も見られ、様々な生物が見られることも知られている。しかし、坪井川遊水地の鳥類相に関する研究は、2011年以降発表されていなかった。そのため本研究では、現在の鳥類相を明らかにすることを目的とし、先行研究との比較も行った。また新たに、鳥類の出現地点をメッシュ地図上に記録する調査を行い、坪井川遊水地のどこが鳥類に利用されたのか明らかにすることも目的とした。
研究には、調査範囲を網羅的に歩く定性調査と、種と出現地点を記録するラインセンサス法による定量調査を用いた。それらに加え、ヨシ原を代表するオオヨシキリについてのみ、スポットセンサス法による調査も試みた。
鳥類の種数は49種で、先行研究と比べて少なかった。また、先行研究と同じく夏鳥が少ないという傾向が見られた。出現地点の結果としては、調査地の広い範囲に鳥類が出現した。また、夏の出現地点はヨシ原に集まったが、冬にかけてヨシ原の外にやや分散したようだった。オオヨシキリは、一部のヨシ原に集中して出現した。
調査が一時中断したため単純に比較できないが、2010年と比べて鳥類の種数は減少した可能性がある。先行研究では複数の時期に渡って確認されていた種の中に、一度も確認できなかった種が複数いたためである。また、鳥類の出現地点が全域に及んだのは、ヨシ原や池、広場などの環境が複合的に存在していたためかもしれない。また、夏から冬にかけて出現地点がヨシ原から分散するように広がったのは、ヨシ原が冬にかけて枯れ、三次元的な空間が季節的に変化したためと考えられる。