| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-18  (Poster presentation)

タイリクバラタナゴの鍵刺激は?
What is the key stimulus of Rhodeus ocellatus ocellatus

*𠮷澤梨桜, 山本梨々花(大阪府立富田林中学校)
*Rio YOSHIZAWA, Ririka YAMAMOTO(Osaka Pref. Tondabayashi Jr HS)

繁殖期のイトヨの縄張りオスは、侵入した他のオスに対して突進して追い払おうとする。この闘争行動は婚姻色の赤色が引き金となって起こり,このような刺激を鍵刺激という。私たちがこれまで色素胞に関心を持って研究してきたタイリクバラタナゴ(以下バラタナゴという)もまた,繁殖期のオスは縄張りをもってイトヨと同様の行動をとる。そこで,バラタナゴにも鍵刺激が存在するのか調べることを目的に,本研究を行った。
まず,オスの闘争行動を観察する目的で,バラタナゴのオス50個体、メス50個体を入れた水槽(90㎝×45㎝×45㎝)に産卵床のドブガイ類を入れたところ,婚姻色を呈したオスは貝を中心に縄張りを持ち,侵入しようとするオスを追い払う行動が見られた。次に,バラタナゴがもつ3種の色素胞の色にできるだけ近い,赤,青,黄の三色のプレート(10㎝×10㎝)を割り箸の先をつけて水中に差し込み、反応を観察したところ、雌雄ともにプレートをつつく行動が見られ,赤色をつつく回数は青や黄に比べて極端に多かった。最後に,強く反応した赤色のプレートの大きさを4段階(最大一辺8㎝)に変化させたところ,プレートが大きくなるほどつつく回数が増えた。
昨年の研究から赤色素胞は婚姻色を呈したオスにのみ存在することが分かったこと、そして今回の実験では赤色をつつく回数が特に多かったことから、バラタナゴのオスは赤色を見ると攻撃する習性があると考えられる。つまり、バラタナゴのオスの闘争行動の鍵刺激は赤色である可能性がある。一方、メスも赤色に強く反応したことから、メスにとっても何らかの鍵刺激であると考えられる。また,赤色が大きくなるほど反応が増したことから,バラタナゴは相手の大きさに関係なく,赤色が視界に入ると闘争行動を起こす可能性が高い。以上をふまえて、今後は,バラタナゴの反応をより強く引き出す赤色と体の部位の関係について,模型を使った実験を行う予定である。


日本生態学会