| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-22  (Poster presentation)

河川横断物とモクズガニの遡上
Migration of the mitten crab(Eriocheir japonica) through weirs

*田中宏樹(金光学園高等学校)
*Koki TANAKA(KonkoGakuen Senior High School)

【背景】モクズガニは降河回遊種であり、海で発生した後川へ遡上して成長し、海へ下って産卵する。高梁川(岡山県)ではモクズガニ漁がおこなわれているが、近年漁獲量が減少傾向にある。堰やダムがモクズガニの遡上を阻害している可能性が示唆されていた。モクズガニの漁獲量減少の一因が堰などの遡上に与える影響にあると考えた。
【目的】本研究では、ラバー堰がモクズガニの遡上に与える影響と、影響を与える条件の解明を目的とした。表面構造等の特徴からモクズガニが遡上しにくいと考えられるラバー堰に注目した。ラバー堰の改良を目指している。
【方法】環境DNAを用いて1)大島川、2)里見川、3)鴨方川(2)の支流)、4)吉田川(すべて岡山県)におけるモクズガニの生息分布を推定した。1)にはラバー堰が設置されていない。2)では3)との合流地点よりも下流に、3)には魚道のあるラバー堰が設置されている。4)には魚道のないラバー堰が設置されている。ラバー堰の上下流部を調査地点とし、生息状況を堰の上下流で比較した。ほかに、各ラバー堰が膨らむ時期の違いなどを加味して遡上に与えている影響を考察した。
堰を挟んだ川の上下流を再現した水槽に模擬堰を設置し、模擬堰の条件を変えながら遡上に影響を与える条件を考察した。A.下流からの角度が急でゴム板をはりつけた模擬堰、B.A.と同じ角度で人工芝をはりつけた模擬堰を比較した。
【結果】大島川では、上流まで生息が確認できた。里見川では、ラバー堰の下流部に比べて上流部で生息数が少ないと推定された。鴨方川では上下流とも生息数が少ないと推定された。吉田川ではラバー堰の上流部も生息数が多いと推定された。室内実験では、A.の条件の模擬堰で遡上が確認されなかった。B.の条件の模擬堰では、実験個体の過半数が遡上した。
【結論】モクズガニがラバー堰を遡上できない可能性がある。ラバー堰の表面構造の改良が遡上阻害緩和に効果的である可能性がある。


日本生態学会