| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-24 (Poster presentation)
ナヨクサフジ(Vicia dasycarpa)は、ヨーロッパから西アジア原産の外来植物で、近年日本各地で分布を広げ、在来種に影響を与えていることが報告されている。今までの研究で、河川地域でのポリネーターの特定、ナヨクサフジ繁茂による植生への影響については特定できた。しかし、河川から離れた地域でのポリネーター特定や適切な駆除時期の特定が行われておらず、これらを明らかにすることを本研究の目的とした。
調査は奈良県内で行い、訪花昆虫調査や植生調査を行った。
その結果、4つの調査地で9種264個体のポリネーターが確認され、住宅街では約50%がシロスジヒゲナガハナバチ、約25%がセイヨウミツバチであった。田畑の広がる地域では約40%がキムネクマバチであった。住宅街でもシロスジヒゲナガハナバチなどが確認されたことより、川沿い以外でも繁殖が可能となり分布を広げられると考えられる。
植生調査では、3月に刈取したコドラートを3ヶ月間調査したところ、草本種が28種見られ、そのうち、16種が外来種で12種が在来種であった。同様に、4月に刈取したコドラートでは、20種、うち11種が外来種であった。5月に刈取したコドラートでは、12種、うち6種が外来種であった。また、ナヨクサフジが繁茂している時期には、セイバンモロコシやセイタカアワダチソウなどが常に見られた。
3~5月に一度刈取を行っても1カ月もするとナヨクサフジが繁茂することから、これらの月に駆除を行うのは適切でないと考えられる。また、ナヨクサフジを駆除しても、セイバンモロコシやセイタカアワダチソウなどの外来種がみられるようになったことから、大和川において外来種を駆除しても他の外来種の繁茂につながると考えられる。今回は1回のみの刈取であったが、芽生えの3月と平均被度・群度が小さくなる5月の両月に刈取を行うと、駆除できるかもしれない。