| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-25 (Poster presentation)
1 目的
水鳥と水草の相互関係については、これまでヨーロッパを中心に数多くの先行研究が報告されてきた。とくにマコモなどの一部の水草は水鳥の餌資源になっているばかりでなく、水鳥に営巣場所や採餌場所を提供している。このように、先行研究では水鳥の生息に水草が関与していることが調べられてきた。しかし日本特有の農業景観のひとつであるため池を対象に、どのようなため池に水鳥が飛来し、ため池にみられる水草をどのように利用しているのかについては調べられてこなかった。
以上の背景から,本研究では水鳥と水草の相互関係について、ため池に生育する水草とこれらが生えるさまざまな環境条件に着目して明らかにすることを目的とした。
2 方法
調査は、7月~翌2月に秋田県内の8つのため池を対象に行なった。各ため池では以下の項目を調査した。
①ため池に飛来する水鳥と生育する水草の分布
②池面積と、開放水面・各水草群落面積の測定
③ため池の水質(水温、pH、EC、DO)
面積の測定にはカシミール3Dの面積測定ツールを使用した。各ため池における水鳥種数と水草の種数、各植生面積との関係性について、相関分析により解析した。
3 結果と考察
8つのため池では13科20種の水草と3科6種の水鳥が確認された。ため池に飛来した水鳥の種数は、水草の種数合計と正の相関を示した。つまり水草の種数がふえるほど水鳥の種類は多くなった。また水鳥の種数は、池面積、水生植物の割合と正の相関、開放水面の割合と負の相関を示した。水鳥は面積の大きい池に数多く生息するが、とくに水生植物の割合の大きい池で多いことがわかった。
以上から、面積が大きく、水草の面積、種数ともに多いため池で多くの水鳥が飛来し、水鳥の生息には水草の存在が重要であることが示唆された。渡り鳥の飛来地として知られる八郎湖をはじめ、周辺地域での水草の自生地は少なく、ため池の水草を積極的に保全していくことが必要である。