| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-26 (Poster presentation)
私は、耕作放棄地にあるイノシシの捕獲檻に仕掛けられた暗視カメラに様々な動物が映り込んでいたことに興味を持ち、2つの調査を行った。まず、イノシシが地面を掘り返す行動によってまわりの植生に影響を与えているか、仮説として埋土種子の発芽を助けていると考えた。次に、捕獲檻周辺にやってくるイノシシを主とする野生動物の現れる時期やその動物たちとの関係を調べた。
方法は、2020年4月から12月まで捕獲檻周辺に設置された暗視カメラから定期的にデータを回収し、出現した生物と時刻を記録した。また、7月中旬に檻付近の5地点から土を採取した。4地点はイノシシが掘り返した所、1地点は掘り返しをしていない所で、ここでは上層から4㎝ごとに掘り、12㎝まで3層の土を採取した。計7サンプルの土を用意し、8月下旬まで毎日水をやり続け、1週間ごとに発芽した種子の同定を行った。
画像解析の結果は、イノシシは秋に出現頻度、頭数ともに多くなり、冬に出現頻度が減少した。またイノシシを呼び寄せるために檻に置いてある餌の米ぬかを本来食べそうにないキツネやアナグマ、フクロウを春から初夏にかけて確認することができた。これは米ぬかによってくるネズミやスズメを狙ってのことだと考えられる。
発芽種子の結果は、全サンプルで21種を確認した。イノシシが掘り返した土の4サンプルのうち、2サンプルは米ぬかが混じっており、発芽数が少なかった。それ以外の2サンプルと掘り返しをしていない土を比べると、発芽数、発芽種子数ともにイノシシが掘り返した後の土の方が高かった。発芽した植物が、地表からどれくらいの深さにある埋土種子であったか、掘り返しをしていない土の3サンプルと比較したが、どの層にも共通する植物があり、断定はできなかった。イノシシの掘り返しを受けることによって植物が芽生えやすくなるのではないかと考えられる。