| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-28  (Poster presentation)

草刈りがヒゴスミレの生育に与える有効性
Positive effects mowving has on the growth of Viola chaerophylloides

*齋藤礼暢, 小川滉太(新津高等学校)
*renon SAITO, kouta OGAWA(Niitsu High School)

 新潟県におけるヒゴスミレ(Viola chaerophylloides var. sieboldiana)は、現在、「レットデータブックにいがた」(新潟県)で絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されており、秋葉丘陵の3地点でしか見られない。そこで、新潟県のヒゴスミレの保全を目的に、2016年度よりすでに生息が知られていた新潟市秋葉区で先輩たちが調査を行い、積雪地域に適応しているナガハシスミレと比較した。ナガハシスミレが冬にロゼット葉を形成し、雪どけ後すぐに光合成を行えるのに対し、ヒゴスミレは冬にすべての葉を落とし、再び葉を展開し始めるのが4-5月と光合成を始める時期が遅れてしまう。また、その頃は、林床の草本や落葉広葉樹が葉を茂らせるため地表の照度が低くなる時期でもある。2019年度からの調査で、ヒゴスミレの生息地のうち2地点で草刈りが入ることを確認した。草刈り後の生存率は50%でダメージを多く受ける。一方で草刈りが入れば照度が確保されるためにメリットがあると考えた。実際、個体が多くみられる地点は草刈りが入る区域で、照度の高いほうが多くの果実を形成していた。そこで、時期や草丈などを配慮したうえで草刈りを行えば、個体群を維持できるのではないかと考えた。観察の結果、果実を形成し始めるのは5月下旬からで、9月に多くの果実をつけ、個体サイズが6cmよりも大きい個体が果実を形成していた。刈り込む高さによっては果実を形成する個体が残っていた。また、草刈り・食害後でも、地下部が無事であれば翌年も生存できていた。さらに実生の生存率、越冬個体の生存率、結果率から子孫を残せる個体を1個体つくるために、いくつの果実が形成されればよいかを算出した。そこから、草刈りの時期とその高さを配慮した草刈り方法を提案する。


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