| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-29 (Poster presentation)
ボルボックス(学名V.aureus)は、単細胞性のクラミドモナスの寒天質状の細胞壁が膨れて、その中で細胞の数が増加したものである。
「ボルボックスの柱」とはボルボックスが遊泳する際に見られる一本の柱のように並んだ状態のことを示す。以前の実験(関, 2020)からボルボックスの柱はボルボックスの下降運動が原因で発生するものと考えた。また、下降運動はボルボックスが生育している試験管に振動を与えることや温度変化で発生する。本研究では柱の形成条件を検討した。
試験管内に培養したボルボックスに雨を模して水滴を落とし、振動を与えた。結果、すべての試験管においてボルボックスの下降運動は観察されなかった。水滴による振動はボルボックスの下降運動の主要な原因ではないと考えられる。
ボルボックスの下降運動の観察には試験管上部への局在が必要である。経験上、ボルボックスが生育している試験管に光を当てた場合、光があたる反対側の壁面にボルボックスは集まる。、試験的に試験管下部から白熱灯の光を当て、ボルボックスの水面への集合を期待したところ、ボルボックスの循環運動が観察された。再度実験を行った際に同じような運動が見られたので、光と熱が運動の原因であると考えられる。また、白熱灯は光だけでなく、熱も放出する。比較実験としてLEDライトを用いて実験を行ったところ、ボルボックスの循環運動は緩やかであった。このことからボルボックスの循環運動には熱も強く関係していると考えられる。
今後は自然条件の風による振動を推定した実験を行いたい。また、白熱灯を当てる位置がボルボックスの下降運動に関係していると考えられるので、今後は様々な角度から白熱灯を当て、ボルボックスの運動の様子を観察していきたい。そして、循環している際のボルボックスが柱を形成しているように見えたことから光と熱によって柱は形成されると考えられるので、柱を形成する条件も引き続き検討していきたい。