| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-30 (Poster presentation)
ヒガンバナ(学名:Lycoris radiata)の鱗茎にはアルカロイドの一種であるリコリンが含まれている。リコリンはリボソームに作用しタンパク質の合成を阻害すると報告されており(Nicolas Garreau de Loubresse, Irina Prokhorova, Wolf Holtkamp, Marina V. Rodnina, Gulnara Yusupova & Marat Yusupov, 2014)、植物の発芽を阻害することが知られている(農業環境技術研究所. 1998)。また、リコリンの作用は植物によって異なり、イネ科植物よりもキク科植物の方がリコリンの作用が強いということも知られている(農業環境技術研究所. 1998)。これらのことから、ヒガンバナから除草剤が作れるのではないかと考えた。
ヒガンバナの鱗茎から作成した抽出液を、脱脂綿で発芽させたマカラスムギに与えたところ、成長が抑制された。抽出液を滅菌し得た上澄みを、土に植えて発芽させたシュンギク、カンシロギク、マカラスムギに与えたところ、シュンギクとカンシロギクは枯死し、マカラスムギのみ枯死せずに残った。
イネ科であるマカラスムギとキク科であるシュンギク・カンシロギクとで生育状況に違いが現れたのは、リコリンの作用の差によるものであると考えられる。
脱脂綿で発芽させたマカラスムギと、土で発芽させたマカラスムギとで生育状況が異なったのは、土に抽出液が拡散して濃度が薄まった、もしくは土に含まれる成分が抽出液の成分を吸収・分解したためであると考えられる。
土を使った実験結果の差から、ヒガンバナの鱗茎から選択的な除草剤が作れると考えられた。
今後の展望として、「地面に抽出液を撒いた時に選択的な除草剤としての効果を発揮するのか」「リコリンによってシュンギク・カンシロギクのタンパク質の生成量が減少しているのか」を調べたい。また、別の観点として、「イネ科が進化の過程で抽出液の成分への耐性を得たのか、もしくはキク科が進化の過程で抽出液の成分への耐性を失ったのか」を調べたい。