| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-33 (Poster presentation)
<目的と背景>
海洋に漏出しているプラスチックごみは1年間に1千万トンを超え、海洋生物や人間への健康被害が心配される。私たちは海のマイクロプラスチック問題の解決に向けて、市販の天日塩(世界中の試料)から単離した海洋性細菌を用いて、生分解性プラスチックの材料になる物質を簡便に作らせる方法を検討した。海洋性細菌が産生する生分解性プラスチックなら海で分解されると考え、それを容易に生産できる方法を見つけたいと思ったからである。また、7月からのレジ袋有料化で普及したバイオマスプラスチック配合のレジ袋が本当に環境にやさしいのか、その生分解性についても調べた。この研究はSDGsのゴール、3、9、12、14、15に関連する。
<方法と結果>
12種類の天日塩から66種の海洋性細菌を単離し、約10種の菌株の培養時に培養条件を弱アルカリ性、スクロース添加、高浸透圧状態にコントロールすることでPHB(ポリヒドロキシ酪酸:生分解性プラスチックの材料物質)を効率よく合成・蓄積させることに成功した。菌体から抽出して乾燥させたPHBにはプラスチックとしての性質と堆肥中での生分解性があった。なお、菌株の種の同定や物質の分子量の特定は、大学等で今後調べていただく予定である。また、バイオマスプラスチック配合のレジ袋は土壌中でほとんど分解されないことがわかり、排出ゴミとしては環境に優しくないとわかった。
<課題・展望>
大きなプラスチック製品はリサイクルできるが、使い捨ての超小型プラスチック製品は回収できない。愛媛県の海浜に漂着しているマイクロプラスチックの約4割(重量比)が徐放性肥料カプセル(肥料を封入して水田に散布される直径2~3ミリのポリエチレン製プラスチック)である。そのような使い捨ての小型プラスチック類に生分解性を持たせるとよいと思う。
<備考>
この研究は「サイエンスキャッスル研究費アサヒ飲料賞」の助成を受けた。