| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S09-3  (Presentation in Symposium)

気候変動応答を捉えるための全国森林モニタリングのネットワーク化とデータマイニング
Network construction and data mining of forest monitoring sites to reveal responses of tree communities to climate change

*吉川徹朗, 竹内やよい, 角谷拓(国立環境研究所)
*Tetsuro YOSHIKAWA, Yayoi TAKEUCHI, Taku KADOYA(NIES)

現在進行している気候変動は生態系への大きな危機要因であり、気候変動が森林群集に及ぼす影響を検出し、今後の群集変化を予測することは陸域生態系保全の上で急務である。気候変動の進行とそれに対する森林生態系の応答は空間的に大きく異なり、また森林群集は他の様々な要因によっても変動するため、その影響評価には、多地点における長期観測データが不可欠である。これまで国内では複数の森林サイトで長期観測が実施されているが、これらのデータは十分に統合されているとは言いがたい。また過去に取得されたデータの収集や活用もこれまで十分には行われていない状況である。
これらの課題を解決するために、日本長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)、森林総合研究所、および国立環境研究所は、日本列島における既存の森林観測サイトをつなぐネットワークを構築し、データの収集・統合と、各地の研究者と共同で学術論文などに公表済みのデータのマイニングを進めた。また一部のプロットについては再調査を実施し、最新の毎木データを取得した。その結果、全国198プロットにおける森林の経時データ(1951年〜2020年:プロット面積0.05ha以上、追跡年数5年以上)を得ることができた。
本講演では、これまでに構築された観測ネットワークとそこで得られたデータの概要を示し、現在進めている分析の結果の一部を紹介する。統合されたデータをもとに、日本の森林樹種を4つの機能群(北方針葉樹・落葉広葉樹・温帯針葉樹・常緑広葉樹)に分類して分析したところ、各地で機能群の構成が変化しつつあり、特に寒冷地に分布する北方針葉樹の相対優占度が減少していることが明らかになった。これらの結果を踏まえて、今後の気候変動影響に関する研究の展望と、将来的な森林モニタリングやデータ統合のあり方について議論を行いたい。


日本生態学会