| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W02-1 (Workshop)
本講演では、まず、階層モデリングの基本的な概念を整理し、モデルの下で行われる推測の概要を紹介する。本集会で着目する階層モデルは、個体数量のように直接的な計測が困難な数量を潜在変数として定式化し、背景にある生態過程と観測過程を表す異なる確率分布を組み合わせることで、データの変動を説明する統計モデルである。モデルの当てはめは、最尤推測ないしベイズ推測によって行われる。その結果、生態過程と観測過程を特徴付けるパラメータが推定され、同時に、得られているデータセットを条件とした潜在変数の予測値(事後分布)が得られる。つまり階層モデルにおいては、性質の異なる未知の過程に関する推論と、その値が未知ないし部分的にしか観測されていない潜在変数に関する推論の両方が行われる。こうして得られたモデルはデータ生成過程を表現する確率モデルとして新しいデータの予測を与えるため、効率的な研究デザインの設計に活用できる。
続いて、多地点での環境DNAメタバーコーディング研究に適用できる多種サイト占有モデルの拡張を導入し、環境DNAメタバーコーディングに固有の階層的なワークフローの中で、異なる段階で生じる偽陰性の種検出誤差を考慮したデータ解析と調査設計の実例を紹介する。霞ヶ浦流域の淡水魚類群集を対象とした研究から、環境DNAメタバーコーディングによる検出のしやすさには種間で大きな偏りがあること、一定の予算の下で種多様性を効率的に把握する上でサイト内の反復を確保することが有効であることが明らかとなった。