| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W08-1 (Workshop)
台風による森林の風倒発生メカニズムの解明は、気候変動にともなう台風の激甚化に対する適応策のデザインをはじめとする森林の適切な管理に不可欠である。しかし、ハザード・暴露・脆弱性にかかわる様々な要因が風倒の発生確率に影響するプロセスの全体像はよくわかっていない。本研究では、1)2004年台風18号(風台風)と2)2016年8月に連続して北海道に上陸・接近した3つの台風(雨台風)により、北海道で発生した風倒と多様な要因の関係の機械学習によるモデリングを試みた。1)より、林分高・最大風速・立木密度が風倒発生要因として重要であること、自然林では風倒が発生しにくいこと、人工林では急傾斜地や尾根地で風倒リスクが高いことが明らかになった。2)より、優占樹種・最大風速に対する相対斜面方位・期間中の総雨量・地形露出度が風倒発生要因として重要であることが明らかになった。風倒の発生確率はトドマツ優占林分において著しく高い、最大風速時の風向きに対して正面側の斜面で高い、地形露出度が高い立地で高い、総雨量が多い立地で高い、といった傾向があった。また、多くの変数と風倒確率の間の関係は、樹種間で異なっていた。一例をあげると、トドマツは他の樹種と比較して少ない雨量(総雨量60mm程度)から、雨量に伴う風倒確率の著しい増加が見られた。このような種間差は、根系の形状とそれに伴う揺動時の地中への雨水の侵入の違いを反映している可能性が考えられる。二事例より、雨量の過多にかかわらず、風倒の発生には最大風速が主要因であること、風台風の場合は風の吹き抜けにかかわる林分構造が、雨台風の場合は根の形状を含む樹形が、風倒発生プロセスに深くかかわっていることが示唆された。本研究の結果から、台風激甚化に対する北海道の森林管理における適応策に関して複数の示唆が得られた。