| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W08-2 (Workshop)
近年、大雨による洪水や土砂崩壊、大型の台風の上陸といった自然災害が頻発し、森林域においても土砂崩壊や風倒被害が発生している。森林管理においても、このようなリスクを低減するための適応策が求められている。本研究では、ハザード・暴露・脆弱性の観点から総合的に構築された風倒リスクモデル(Foreco 479:1-9、以降モデル)を森林管理に応用し、バイオマス損失の少ない森林景観づくりを検討することを目的とした。
対象地は北海道道南地域であり、この地域では2016年連続台風(7号、11号、10号)とその後の大型低気圧によって甚大な風倒被害が発生した。本研究では、モデルを用いて2種類の風倒リスクを計算した。1つは、気象条件(対象地の風倒確率が最大グリッドの実測値)と林分状況(林齢50年のトドマツ人工林)を固定した暴露ベースリスクである。もう1つは、気象条件のみを暴露ベースリスクと同様に固定し、林分状況を実況やシナリオベースのものにしたトータルリスクである。前者はシナリオ作成に、後者はシナリオ評価に使用した。作成したシナリオは、暴露ベースリスクが高い人工林を低リスクの自然林と入れ替える①人工林再配置シナリオ、高リスクの人工林を自然林化する②自然林化シナリオ、高リスクの人工林を短伐期にする③短伐期シナリオの3つである。それぞれのシナリオについて、暴露ベースリスクの上位5~100%まで5%刻みで林分状況を変化させた後、トータルリスクを計算し評価した。
結果、すべてのシナリオでトータルリスクが実況と比較して30~40%低減された。また、上位20%を変化させることで、これらの効果を得られた。効果は、人工林再配置と天然林化シナリオが同等で高く(40%)、短伐期化シナリオの効果は低かった(30%)。モデルを応用することによって、人工林の配置や管理の変更によるリスク低減効果を明確にすることができた。