| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W09-3  (Workshop)

温度ストレスと菌種間競争が菌類の炭素配分戦略に与える影響
Effects of temperature stress and interspecific interactions on carbon allocation strategies of fungal mycelia

*木村瑳月, 深澤遊(東北大学)
*Satsuki KIMURA, Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)

木材腐朽菌は森林生態系の物質循環において重要な存在であり,分解能力の違いから褐色腐朽菌と白色腐朽菌に分けられる.木材腐朽菌の群集構造は種間競争により形成され,種間競争は温度変化に大きく影響を受けるが,そのメカニズムはよくわかっていない.本研究では,温度が褐色腐朽菌と白色腐朽菌の競争に影響するメカニズムを理解することを目的とし,温度による物質生産の変化と種間競争の関係を調べた.アカマツ枯死木に優占する褐色腐朽菌マツオウジおよび白色腐朽菌シハイタケの菌株を用い,30℃と35℃の温度条件下で純粋培養及び2種の対峙培養を25日間行った.培養後,菌糸体重量,CO₂放出量,培養液の成分,対峙培養における菌糸被覆率を調べた.その結果,30℃に比べ35℃で菌糸体重量が減少し,CO₂放出量が増加したことから35℃では両種とも高温ストレスを受けていると言えた.菌糸体重量当たりの有機酸生産量は種により異なり,特にシハイタケでは35℃で酢酸生産量の著しい減少がみられた.また,対峙培養では35℃でマツオウジが優占することが示され,一般化線形混合モデルを用いた解析の結果,菌糸被覆率は乳酸,酢酸生産量で説明できた.以上から,温度変化が木材腐朽菌の物質生産量を変えることで種間競争に影響することが示唆された.これは地球温暖化による温度上昇が菌類群集を大きく変化させ,森林生態系の物質循環に影響を及ぼす可能性を示唆する.


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