| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W14-3  (Workshop)

魚類病害虫ハダムシ(扁形動物: 単生類)の多様性とその利用宿主の解明
Biodiversity and host utilization of capsalids parasitic on marine fishes (Mongenea) in Japan

*新田理人(神戸大学)
*Masato NITTA(Kobe University)

「ハダムシ」は主に魚類の体表に寄生する単生類の総称で、養殖場・水族館等において深刻な魚病被害(ハダムシ症)を引き起こす。養殖被害は1960年代から生じているが、蔓延したまま現在まで収束しておらず、近年では新たな外来ハダムシが日本に侵入し猛威を振るっている。こうした背景の中、ハダムシの寄生動態・防除の研究が進んでいるが、いまだ根本的な解決に至っていない。ハダムシは容易に観察できる形態的特徴が乏しく、形態のみに基づく同定は熟練者でなければ難しい。さらに、よく報告される種においても、遺伝的に異なる複数の種が含まれていることが知られている。また、野生魚に寄生するハダムシの分類・分布に関しては散発的な情報のみにとどまり、養殖魚への感染ルート・ハダムシ本来の生態など基本的な部分が未解明である。これは過去日本における、ハダムシ種同定のあいまいさと、近年の養殖魚に限定された研究が、情報の集約と研究発展を阻害する大きな原因と考えられた。演者は2018年から、網羅的な野外採集によるハダムシの宿主情報の取得・形態分類・DNA解析を行い、DNAバーコーディングによる簡易な同定手法の開発と、野生魚における寄生動態の解明を進めている。現在までの3年間で検査した海産魚は102科283種(計約1,200個体)であり、そのうち25科55種の魚類から約18属(3未記載属)56種(約17新種)のハダムシ科単生類を採集し、現在分類を行っている。なお、研究開始以前(1894~2018年)に国内から記録されていた種数は14属32種である。また調査の過程で、琉球列島と本州間におけるハダムシ種の分布・分散のギャップが示唆され、ハダムシ種ごとの宿主特異性の違いや、養殖場で問題となる種の野外生態も明らかとなってきた。本発表では野生下の寄生生物多様性解明研究の概要をお伝えしたい。


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