| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W15-1  (Workshop)

生物多様性及び生態系サービスを巡る国内外の動向
Current discussion on the global and national issues regarding biodiversity and ecosystem services.

*蔵本洋介(環境省)
*Yosuke KURAMOTO(Ministry of the Environment)

2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約COP10において、「自然と共生する」世界の実現を目指した2020年までの行動目標として「愛知目標」が採択された。世界各国においてこの目標の達成に向けた努力が進められ、わが国でも2012 年に閣議決定した「生物多様性国家戦略2012-2020」で国別目標を設定し、施策を実施してきた。
生物多様性及び生態系サービスに関する評価として、わが国では2010年に「生物多様性総合評価報告書(JBO)」が、2016年に「生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書(JBO2)」が取りまとめられ、生物多様性の状態が長期的に悪化傾向にあることや、生態系サービスの多くが過去と比較して減少または横ばいで推移していること等が示されてきた。
2019年にIPBESが公表した「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」では、生物多様性が人類史上これまでにない速度で減少しており、生態系サービス(自然の寄与)が世界的に劣化していること、それらの変化要因が過去50年で増大していることが指摘された。また、2020年に生物多様性条約事務局がまとめた「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」においては、ほとんどの愛知目標についてかなりの進捗が見られたものの、20の愛知目標で完全に達成できたものはないと評価された。
愛知目標に続く「ポスト2020生物多様性枠組」の議論においては、条約の3つの目的(生物多様性の保全、持続可能な利用、遺伝資源利用の利益配分)のバランスを重視するとともに、生物多様性損失の間接的な要因である社会・経済活動に関連する目標を強化する、といった観点から、具体的な目標が検討されている。このような国際的な議論も踏まえ、わが国においても次期生物多様性国家戦略の検討を進めている。
上記の背景を踏まえ、わが国の生物多様性及び生態系サービスの現状を評価するとともに、次期生物多様性国家戦略の下で取り組むべき課題を整理するため、JBO3がとりまとめられた。


日本生態学会