| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W16-5  (Workshop)

東日本大震災前後における森林パッチのネットワークと連結性の定量的モニタリング
Quantitative monitoring of changes in forest patch network and connectivity before and after the Great East Japan Earthquake

*平山英毅, 富田瑞樹, 原慶太郎(東京情報大)
*Hidetake HIRAYAMA, Mizuki TOMITA, Keitarou HARA(Tokyo Univ. Info. Sci.)

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波により,宮城県仙台湾沿岸域における森林域は劇的に縮小し,その後も復旧・復興事業に伴い森林域の分布には変化が起きている.森林分布の大規模かつ継続的な変化は,森林を生息地とする生物が利用可能な生息地の総量を減少させるだけでなく,生息地間の距離を増加させることで連結性(Connectivity)の低下を引き起こす要因となる.この森林分布変化に伴う森林パッチの連結性の変化を定量的に明らかにすることは,低頻度大規模撹乱による生態系への影響を考える上で不可欠である.本研究は,森林パッチの分布および連結性の変化を明らかにすることを目的とした.
 仙台市の被災地を対象に,震災前(2010年),震災直後(2011年),震災直後以降(2012年),5年経過時点(2016年)の衛星画像を分類した土地被覆図から森林パッチ分布図を作成した.次に,各対象年の森林パッチ分布図から,生物の移動を仮定した距離クラス(100 m,800 m,2500 m)ごとのネットワーク図を作成した.連結性積算指数(Integral Index of Connectivity: IIC)と,クラス一致確率(Class Coincidence Probability: CCP)を連結性指数として用いることで,森林パッチのネットワークの変化を定量的に解析した.
 ネットワーク図と連結性指数の解析結果から,津波によって森林パッチ面積が縮小し,移動経路が分断された地域,および,2016年までに新たに出現した森林パッチが残存パッチと接続することで,移動経路が回復した地域を可視化できた.IICは2016年に至るまで継続して連結性が低下し続けたことを,CCPは移動経路の回復による増加を,それぞれ示した.IICとCCPを併用し連結性を評価したことで,単一の指数では表現が困難な経年変化を定量的に明らかにすることができた.本研究で用いた連結性の定量評価手法は,低頻度大規模撹乱と,その後の人為的影響下における連結性変化をモニタリングする上で有効であると考えられた.


日本生態学会