| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W18-1  (Workshop)

ドローンとディープラーニングでどこまで樹種が識別できるのか、可能性と将来性
The possibility and future vision of tree species identification using drone and deep learning

*大西信徳(京都大学)
*Masanori ONISHI(Kyoto Univ.)

 近年ドローンのRGB画像にディープラーニングを用いることで上空から低コストに樹種識別が可能であることが明らかとなり、持続的な森林管理に向けて社会実装が期待されている。本研究ではこの技術が日本において何種類の樹種の識別が可能であるか検討し、また他地域での識別性能のロバスト性を検証した。
 調査は暖温帯林と冷温帯林にて行った。京都府及び和歌山県計3か所にて複数回ドローンを飛行し、現地調査によりドローン画像の樹種同定を行い、針葉樹5種・広葉樹51種を含む58クラスの教師データを作成し、学習用データと評価用データに分けた。次に京都府、奈良県、鳥取県計3か所にて夏季に一度ドローンを飛行し、約1haの範囲で同様の調査により針葉樹5種・広葉樹19種を含む26クラスのテストデータを作成した。ディープラーニングにはEfficientNetB7にファインチューニングを行った。
 結果として、評価用データに対しては、ほぼ確実に全ての樹種の識別が可能であり、高い識別ポテンシャルがあることが示唆された(Kappa値0.979)。一方でテストデータに対しては、スギ・ヒノキ・モミ・アカマツやブナ・コジイ・コナラなどの識別にはある程度成功したものの、識別できない種も多く、全体の精度は低かった(Kappa値0.472)。識別精度を向上させる方法として対象地に生育している樹種のみにモデル出力を限定した結果、精度が向上し、識別可能種を増やすことができることがわかった(Kappa値0.616)。さらにディープラーニングで抽出された特徴量に対してk近傍法を応用することで、対象地データの環境に調整された識別モデルを作成することが可能となり、より多くの樹種の識別や、学習していないデータに対しても識別が可能であることが示唆された。以上の結果から、ドローンとディープラーニングによる樹種識別システムは非常に多くの樹種の識別可能性を持っており、対象地の植生・環境への調整を行うことでより高い精度で識別ができることが明らかとなった。


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