| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
自由集会 W18-2 (Workshop)
近年のディープラーニングの進展は目覚ましく、日常生活の至るところで人工知能が実用化される時代が到来しつつある。生態学においても、ディープラーニングを組み合わせた研究は増加しており、将来的にはフィールドワークに並ぶ必須のスキルになるかもしれない。特に、画像認識技術はすでに幅広く実装され、生態学者が望む対象種の識別に幅広く用いられている。しかし、画像認識技術はあくまでもツールであり、使い手である生態学者ならではの発想が求められる。例えば、今後の生態学において市民科学は欠かすことができない視点のひとつである。市民科学は人々と自然を結びつけるための重要な役割を果たすだけでなく、研究者が収集不可能なレベルでのビッグデータの生成を可能にする。そして、ビッグデータの解析はディープラーニングとの親和性が高い。生態学と市民科学、そして情報科学とが融合することにより、新時代にふさわしい研究が可能になる。本発表では、環境問題のひとつである外来種の検出に画像認識技術を応用する事例を示す。外来種の分布状況を市民科学の力で明らかにする試みはなされてきたが、参加者の多くは「環境問題への意識が高い市民」である。環境問題を解決するために市民の何気ない行動を活用することはできないだろうか。この瞬間も市民のスマートフォンやドライブレコーダーを通して様々な場所の画像が記録されている。その画像には撮影者が気づいていなくても外来種が映り込んでいるかもしれない。しかも、位置情報も記録されている。これらのデータを活用することができれば、これまでは困難だったスケールで外来種の分布情報を把握することができるかもしれない。本研究では、全国で外来種として問題になっているセイタカアワダチソウを識別する人工知能モデルの開発を行った。画像認識技術を応用することで可能になる新たな生態学研究と今後の課題について考察したい。