| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W18-3  (Workshop)

海岸における海洋ごみと微地形の関係
Relationships between Microtopography and the Marine Debris in Coast

*芝田篤紀(京都大学)
*Atsuki SHIBATA(Kyoto Univ.)

 現在、最も重要な地球規模課題の一つとして、海洋ごみ問題がある。海洋生物の誤食や漁網への絡まりなど、海洋生態系への影響はもちろんのこと、漁業や観光業、海運業や健康問題など、人間社会への影響も幅広く、まさに喫緊の課題となっている。様々な研究領域・分野からのアプローチによって、世界中の海域に存在する海洋ごみの調査が進んでいる一方で、陸域における海洋ごみについてはあまり注目されてこなかった。すなわち、陸域と海域との境界部分である「海岸」における、海洋ごみの漂着・集積、またそれら漂着ごみの海域への流出・再流出についてである。漂着ごみとそれによる汚染は、海岸地域の大きな問題となっており、地域のボランティアや行政によって回収作業が実施されているが、その地域内、海岸内の漂着ごみ集積の様相、特に、海岸のミクロな地形環境と海洋ごみの漂着・集積との関係を明らかにした研究はまだほとんどない。そこで本研究では、ドローン(UAV)による空撮画像を用いて、海岸の地形調査と微地形の解析を実施し、どのような漂着ごみが、どのような空間特性によって集積するかについて解明を試みた。一方で、客観的かつ効率的な漂着ごみの検出を目指し、ドローンによる空撮画像から、漂着ごみを自動検出する人工知能モデルの開発にも取り組んだ。本発表では、これらを合わせることで明らかになりつつある、海岸における海洋ごみの漂着・集積と、海岸微地形とのミクロな関係、またその研究アプローチについて議論したい。本研究の成果から、地域ごと、あるいは海岸ごとの具体的で効果的な対策が生まれ、海岸における効率的なごみ回収が行われることによって、海域へのごみの流出・再流出の減少につながることが期待される。


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