| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) A03-03  (Oral presentation)

Determinants of leaf longevity of Arabidopsis halleri under the seasonal environmental fluctuations.【EPA】

*Genki YUMOTO(Kyoto Univ. CER), Haruki NISHIO(Shiga Univ., Kyoto Univ. CER), Tomoaki MURANAKA(Kagashima Univ., Kyoto Univ. CER), Sugisaka JIRO(Kyoto Univ. CER), Mie N HONJO(Kyoto Univ. CER), Hiroshi KUDOH(Kyoto Univ. CER)

葉は光合成生産の中心的な器官であるが、物質生産に加えて、貯蔵、転流、防御など、多面的な機能を持つ。ここでは、個葉寿命の季節動態の制御とその結果もたらされる葉群全体の機能を明らかにするために、アブラナ科の常緑多年草であるハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)において、コホート(一定の期間内に展葉した同齢集団)単位での葉寿命の季節依存性を解析した。春から秋にかけての生育期に展葉したコホート(GS)は短寿命で、コホートの平均としては展葉順に枯死した。その一方で、コホート内の葉寿命は大きくばらついた。この時期は展葉・枯死の回転率が高く、生産力の高い若齢葉で葉群が構成された。10月から1月にかけての越冬期に展葉したコホート(OW)は寿命が延長され、春の繁殖期に同調枯死した。その結果、早く展葉したコホートほど長寿命であった。越冬期は葉の展開・枯死数が少なく、繁殖直前には多様な葉齢構成の葉群が形成された。さらに、季節依存的に変化する葉の枯死タイミングの決定要因に関する操作実験を実施した。GSコホートでは、自己被陰によりストレス誘導性老化遺伝子が誘導され、光環境の低下に依存し葉の老化が促進された。そのため、GSコホート内の葉寿命のばらつきの一部は、自己被陰により説明される。OWコホートでは、自己被陰による老化応答はおきず、これはこの時期の葉が貯蔵機能を持つことと一致する。繁殖期には繁殖器官への転流に同調して、リン酸飢餓応答遺伝子の発現と共に葉が老化した。この老化応答は、シンクを除去することにより起こらなくなることが明らかとなった。OWコホート内間での葉齢に依存しない同調的枯死は繁殖シンク需要した。このように、個々の葉寿命を制御することで季節環境における資源獲得と資源の貯蔵・転流を植物全体レベルで最適化していると結論づけた。


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