| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-06  (Oral presentation)

自然河川での薬剤耐性菌の動態
Dynamics of Antibiotic-resistant bacteria in the river

*小林由紀(山口大学), 田中佑佳(山口大学), 鶴井実桜(山口大学), 松井一彰(近畿大学)
*Yuki KOBAYASHI(Yamaguchi Univ.), Yuuka TANAKA(Yamaguchi Univ.), Mio TSURUI(Yamaguchi Univ.), Kazuaki MATSUI(Kinki Univ.)

背景:抗菌薬の不適切使用などを背景に,薬剤耐性菌の世界的な拡大が国際問題の一つとなっている.O’Nell 委員会(2016)によると,今後有効な対策を取らなければ,2050年には薬剤耐性菌による死亡者数が癌による死亡者数を超えるという試算を公表した.WHO等は“One Health”という「ヒトの健康を守るためには動物や環境にも目を配って取り組む必要がある」概念を提唱しており,薬剤耐性菌問題についても院内に限らず,動物,環境についても現状を把握することが急務とされている.環境中の薬剤耐性菌の情報を把握する必要があるが,知見は非常に乏しい現状にある.そこで本研究では,河川水中における,主に腸内細菌の薬剤耐性菌を検出し,菌種と耐性遺伝子について検索することを目的とした.
材料および方法:2020年5月から8月にかけて河口より3.1km上流,1.4km上流,河口の3地点から河川水を採取し試水とした.河川水を0.2mフィルターで濾過し,薬剤無添加・ABPC添加・CTX添加・TC添加(それぞれの濃度)のMacConkey寒天培地上におき,30℃にて培養し薬剤耐性菌検出率を求めた.また,薬剤添加培地から分離可能なコロニーを単離培養し薬剤感受性試験を行うと共に,塩基配列を決定し相同性を検索した.さらにDDST法によりESBL産生が疑われる菌を検索した.
結果:得られたコロニー30株につき後相同性検索を行った結果,Pseudomonas属26.7%,Serratia属20%, Ochrobactrum 20% が得られた.またDDST法の結果,ESBL産生菌が疑われた菌5種に対し,遺伝子型CTX-M9型のプライマーを用いてPCR法を行った結果,Serratia marcescensを含む2菌種がCTX-M9を持つESBL産生菌であることが明らかとなった.
考察:MacConkey寒天培地に発育し得るグラム陰性桿菌に限定して耐性菌の検出を行ったにも関わらず複数の薬剤に対して耐性を示す菌が多く検出された.


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