| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-01  (Oral presentation)

コウノトリ野外放鳥個体の利用分布に対する景観パターン分析
Spatial pattern analysis for Oriental White Stork's utilization distribution

*山田由美(慶應義塾大学, 総合地球環境学研究所), 佐川志朗(滋賀県立大学), 出口智広(兵庫県立大学大学院), 吉田丈人(総合地球環境学研究所, 東京大学), 瀧健太郎(滋賀県立大学, 総合地球環境学研究所), 一ノ瀬友博(慶應義塾大学, 総合地球環境学研究所)
*Yumi YAMADA(Keio University, RIHN), Shiro SAGAWA(University of Shiga Prefecture), Tomohiro DEGUCHI(University of Hyogo), Takehito YOSHIDA(RIHN, The University of Tokyo), Kentaro TAKI(University of Shiga Prefecture, RIHN), Tomohiro ICHINOSE(Keio University, RIHN)

本研究の目的は2段階設定している。先ずはコウノトリという希少種の生息地がどのような景観構造に対して出現確率を高めるか統計モデルを用いて推定することである。次に土地利用を変えると出現確率が上がる可能性を見出すことである。
これをすることで、どこでどのようなアクションを起こせばコウノトリが生息できるような空間を増やせるかをモデル上で明らかにすることができると考えた。
 研究対象地は福井県・兵庫県からの放鳥個体による利用が多く確認されている滋賀県内とした。同種の利用行動を考慮すると、餌資源となるナマズやフナ類に代表されるコイ科魚類の多くが河川の支流と水田を回遊するため、その生活環を妨げないために水路と水田の連続性が重要になる。また近接した樹林地の存在も安全性が確保できるねぐらとして重要となる。これらの観点から、同じ水田でも置かれた景観パターンにより出現確率が変化することなどが分かるモデル作成が必要と考えた。
解決すべき課題としては「ゼロ過剰である観測回数」「連続観測データ(GPS位置情報)活用による空間相関考慮」「計算能力も含めた解像度・範囲の検討」などの点が整理され、条件付き自己回帰モデル(Intrinsic CAR model)、地理的加重回帰モデル(GWR model)それぞれを検討した。
解像度は100mグリッド、範囲は県域と1つの流域を試行。水路や小河川ネットワークの量として河川密度、最新の衛星画像AROS土地被覆データを用いた近接距離と土地利用、数値標高モデルから作成した地形湿潤指数、表層土壌タイプなどを用いて出現確率の説明を試みた。
本発表では上記のモデル結果を報告するとともに、人為的に可変な環境変数である土地利用を変えた場合の応答を示す。


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