| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-01 (Oral presentation)
砂は栄養保持力が低いことから,海岸砂丘は植物栄養の面で厳しい環境である。ただし海岸砂丘地でも,クロマツ林内では土壌が発達することが知られている。では天然記念物鳥取砂丘のようにモザイク状に植物群落が発達している砂丘地では,植物量に応じた栄養蓄積はみられるだろうか。本研究では,鳥取砂丘の表層砂における炭素と窒素の蓄積状況を検討し,砂丘内の植物群落の分布が表層砂の栄養蓄積に与える影響を考察した。鳥取砂丘内に100 m間隔で139か所の調査点を設置し,夏季に植生調査と砂採取を行った。砂は表層5-10 cmで100 mlを採取し, Soli TOC cube (Elementar)により,砂試料中に含まれる全窒素と,態別炭素として有機炭素,元素状炭素,炭酸塩炭素の含有率を測定した。塩分指標として電気伝導度も測定し,植被率との関係を解析した。
植生調査では被度0が59地点,20%以下が40地点で,全調査点の70%を占めた。丘間低地や周囲のクロマツ林に植被率が高い地点があり,最大値の80%は3地点で記録された。全窒素濃度の平均値は0.0018 %,最大値でも0.0067 %と全地点で極端に低く,砂丘内の蓄積はごく少なかった。全炭素濃度の平均値は0.032 %で周辺の砂丘畑表層砂と比べても半分ほどだったが,クロマツ林内では他より2倍以上高かった。有機炭素は平均値0.019 %,元素状炭素濃度は同0.0064 %で,これらの空間分布は全炭素に類似していた。炭酸塩炭素濃度は平均値0.0072 %とごく微量だったが,海岸に近いところで相対的に高く,内陸に向けて減少した。電気伝導度も同様の分布を示した。植被率と全窒素濃度,全炭素濃度,有機炭素濃度,元素状炭素との間は弱い正の相関があったが,炭酸塩炭素と電気伝導度は植被率とは無相関であった。植生被度が高い地点では炭素/窒素が相対的に高い傾向はあったがその相関は弱く,砂丘内には著しく蓄積が進んでいる場所は見られなかった。