| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-05  (Oral presentation)

メタ解析による群集集合プロセスの緯度クラインの検証 【B】
The latitudinal gradient in plant community assembly processes: a meta-analysis 【B】

*西澤啓太(横浜国立大学), 篠原直登(弘前大学), Marc CADOTTE(Univ. of Toronto), 森章(横浜国立大学)
*Keita NISHIZAWA(Yokohama Nat. Univ.), Naoto SHINOHARA(Hirosaki Univ.), Marc CADOTTE(Univ. of Toronto), Akira S MORI(Yokohama Nat. Univ.)

 “生物群集の組成はいかに決定するのか”。群集集合則と呼ばれ、生態学における最古の疑問の一つである。古くは、環境条件が群集組成を決めると考えられてきた(決定論、ニッチ論)。一方で、熱帯林で見られるパターンなどから、生態的な特性とは関係なく主に空間的距離に依存して群集組成が決まる(確率論、中立論)という考えも発展し、30年以上様々な地点、条件下で“環境vs空間”の重要性が比較されてきた。しかしながら、これら“群集集合プロセス”の理解は依然として一般化されず、緯度に沿った傾向も未だに示されていない。
 この一般化を妨げる要因として、空間スケールの問題が大きい。例えば、平地と高山を比較した場合、群集の違いのほとんどが環境条件の違いによって説明される。一方で、10cm隣の植物組成が異なる場合、確率(先住者効果など)以外の要因で説明するのが難しい。このように対象とする空間スケールによって群集集合プロセスの解釈は大きく変化してしまうため、地点間の比較(グローバルなパターンの検出など)が容易でないのである。

 そこで本研究では、世界各地の様々な空間スケールで行われた研究(“環境vs空間”の比較)を収集、メタ解析することで、空間スケールの問題と同時に群集集合プロセスの緯度勾配のパターンの検証を試みた。結果として、環境および空間要因の重要性は、それぞれ緯度勾配に沿って反対の単峰性パターンで変化することが明らかになった。具体的には、低緯度と高緯度の群集組成は主に空間で説明された一方、中緯度地域(20-40度)では環境の説明力が高くなっていた。これと同時に、空間スケールの違いが群集集合プロセスの解釈に与える影響に関しても一般性を見出すことができた。
 以上のように、本研究は空間スケールの違いを考慮した上で、植物群集の集合プロセスのグローバルなパターンを初めて明らかにし、これが種の多様性の緯度勾配に貢献する可能性を示した。


日本生態学会