| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) D04-03 (Oral presentation)
サタケ類の多くは長寿命一回繁殖型のクローナル植物である。長期間クローナル成長をした後、広範囲で一斉に開花・枯死する。一斉枯死後には、開花が見られた地域で発芽が起こり、元のササ群集へと回復していく。しかし、実生発芽後の群集回復過程でどのような生態学的プロセスが個体群動態を規定するのかはほとんど知られていない。2007年に一斉開花が観測された京都のチュウゴクザサ群集には、10 m × 10 m の永久プロットが設置され、実生発芽以降、コドラート内で確認された15000を超える全ラメット(稈)の空間情報、遺伝的個体識別情報、サイズが記録されている。そこで、本研究では、この空間遺伝情報の時系列データを用いて、近交弱勢や密度効果などの要因がクローナル成長時の個体群動態に与える影響を一般化線形モデルの枠組みで解析した。その結果、以下の点を明らかにした。1) 更新最初期の死亡要因として近交弱勢が卓越するが、これは数年間で低下する。2) クローナル成長により密度が増加すると、密度効果によりラメットの死亡率が高くなり、新規出稈数が低下する。3) ラメットサイズが増加すると密度効果がより強く働き、ラメット密度が低下する。これらのプロセスはラメットの空間分布を均質化する作用があった。つまり、発芽初期にはラメットは空間的に不均質に分布していたが成長にともない一様分布に近づいていった。