| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-03  (Oral presentation)

木部構造は葉群内の枝成長および主側関係を駆動する
The xylem structure drives branch growth and apical/lateral relationships within a leaf cluster

*横山大輝, 吉村謙一(山形大学)
*Daiki YOKOYAMA, Kenichi YOSHIMURA(yamagata Univ.)

 頂芽制御とは、頂芽由来のシュート(頂枝)に対し、側芽由来のシュート(側枝)の成長が抑制されることである。伸長成長が抑制された側枝は、親枝よりも道管径が小さくなることが知られているため、ハーゲン・ポアズイユの法則より通水性が低下する。さらに短い側枝は自身同様の短い小枝を伸長するので、親枝の通水性の低下が小枝の伸長成長を制限していると仮説を導き出すことができる。そのため本研究では、通水経路の木部構造が側枝の伸長成長を制限する要因であると仮説を立て、頂芽制御による側枝の成長抑制メカニズムの解明を目的とした。
 多雪ブナ林の低木、亜高木層に生育するタムシバ(Magnolia salicifolia Maxim.)を対象木に用いた。タムシバの6年生の葉群をサンプリングし、形態学的にシュート長を測定し、解剖学的に節間ごとに道管径、道管数を測定した。ハーゲン・ポアズイユの法則より、測定した道管の径、数をもとに、サンプリングした葉群の基部から対象の側枝までの理論的通水コンダクタンス(lK)と側枝から頂枝までの理論的通水コンダクタンス(tK)を推定した。これら通水性に関わる理論的変数は、各シュートの伸長成長を考えるための変数で、各シュートが春先に伸長成長する時に存在した通水経路の道管を計算上用いた。これら変数の関係性を明らかにするため、パス解析を行なった。
 その結果、lKtKは伸長成長時の道管の拡大を制限した。植物の細胞は吸水成長により体積を拡大する。理論上、通水コンダクタンスの上昇は、シュートが伸長成長している時、拡大成長する道管への水の供給量を増加させるため、lKの増加に伴う側枝の道管径の拡大が示唆される。そして、道管径とシュート長に正の相関関係が存在したため、通水経路の水の流しやすさが、側生枝の伸長成長を制限したといえる。以上のことから、通水経路の木部構造は頂枝、側枝の伸長成長を制限し、さらに頂枝と側枝の主側関係を成立させた。


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