| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-05 (Oral presentation)
地球全体の気温が上昇する中で、猛暑が湿地に生育する抽水植物の光合成能力に与える影響を調べるために、ミツガシワの光合成速度の日内変化と光-光合成曲線の日内変化について調査を行った。帯広畜産大学ビオトープに生育するミツガシワ3個体の小葉3枚を実験対象とし、葉のある地表25cmの最高気温が37.9℃と猛暑であった2021年7月19日と、あまり暑くなかった(最高29.0℃)7月22日に、光合成測定装置LI-6400を用いてミツガシワの葉の光-光合成曲線と受光量の日内変化を調査した。その結果、光―光合成曲線の日内変化において、猛暑であった19日にのみ、地表付近の気温が最も上昇した時間帯に光合成速度の低下が見られ、夕方には気温が低下し光合成速度が少し回復したが午前ほどの光合成速度には戻らなかった。また、日中低下が生じなかったと仮定した仮想的な状態と実際に日中低下が生じた状態のそれぞれから予想される光合成速度の日内変化を算出したところ、一日の積算光合成量は、猛暑であった19日は平均して約17%減少したが、あまり暑くなかった22日にはほぼ減少しなかった。これらの実験結果から、比較的冷涼な北海道の帯広においても、猛暑であった19日にはミツガシワの光合成能力が低下していたといえる。また、実際の葉の受光量の下での光合成速度の日内変化だけ見ると、朝から昼にかけての受光量増加の効果により日中の時間帯にのみ低下したように見えるが、光―光合成曲線の日内変化の結果から実際は明け方からすでに光合成能力の低下は始まっていたことが分かった。よって日中低下の影響を評価するためには、野外での実際の光合成速度だけでなく光―光合成曲線の日中の変化についての情報も必要である。Okamoto et al. (2022) Plants, https://doi.org/10.3390/plants11020174