| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-08 (Oral presentation)
多くの鉱山跡地では高濃度の重金属が土壌中に残存し, 植物の定着を困難にしている. 調査地である鉱山跡地でも土壌中に高濃度のCu, Pb, Znが存在しており, 植物にストレスを与えやすい環境となっている. 本研究の対象植物であるミゾソバは調査地での自生が確認されており, 何らかの金属耐性を有すると考えられた. 加えて年間にわたる著しい成長量の変化が確認されており, 成長に伴う重金属耐性機構の変化が生じていると考えられた. そこで本研究では, ミゾソバの重金属耐性機構を季節変動と合わせて解析することを目的とした. ミゾソバの含有元素濃度分析を行った結果, 健全な不定根に高濃度のFe (6000 mg/kg DW以上) を蓄積していることが確認された. 過剰にFeを蓄積していたのにも関わらず毒性症状が確認されなかったことから, ミゾソバは高いFe耐性を有していると考えられた. ミゾソバの不定根に含まれる二次代謝産物の分析を行った結果, 金属毒性軽減物質であるgallic acid, procyanidin B2, condensed tanninの産生が確認された為, これらの化合物がFe無毒化に寄与していると推測された. また, 植物における重金属耐性機構のひとつに, 枯死部への重金属排出による防御機構が存在する. ミゾソバの枯死根においても高濃度のFe (20000 mg/kg DW以上) を蓄積していることが確認されたことから, 枯死根へのFe排出機構が存在すると考えられた. 加えて7月から9月にかけて枯死根の含有Fe濃度は有意に増加したが, Fe量に対する枯死部の炭素量は7月に比べ8月及び9月において有意に減少した. 8月, 9月においてはFeを枯死部に排出するための炭素投資量が減少したと示唆され, 枯死部への炭素量を抑制することで効率的にFeを排出する機構が存在すると考えられた.