| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-04 (Oral presentation)
北海道根釧地方では,特に1950年代以降急速に樹林地が草地へと転換され,草地酪農が展開された。このことが,河川水および沿岸域に影響を与えている可能性が指摘されている。そこで,漁協やNGOが主体となって,河畔域を中心に草地から樹林地への復元の取り組みが行われている。そこで,この活動による土壌への影響について検討した。西別川流域の植樹地10か所を選定し,植栽後年数,樹高,L・F層厚さと乾物重量,H・A層を地下20cmまで採取し,厚さと容積重を測定した。L・F・H・A層の炭素含有率を測定した。乾物重量および容積重と炭素含有率から,炭素現存量を算出した。植栽後年数は5~49年,樹高は1.5~12.0mであった。植栽後年数の経過とともに樹高は増加する傾向が見られた。植栽年数が浅い植樹地の林床は,主にササ主体であった。炭素現存量の平均は,L・F層で140.3g/m2,H層で9131.2g/m2,A層で11263.8g/m2となり,A層の炭素現存量が最も大きかった。これは,A層の厚さが約15㎝に対して,H層の厚さが約5㎝であることが強く影響していると考えられる。L・F・H・A層の炭素含有量と植栽後年数,樹高との間には明確な関係が見られなかった。一方,H層の炭素含有量とA層の炭素含有量との間には負の相関が,L・F層の炭素含有量とH層の炭素含有量との間には負の相関が見られた。このことは,林床リターの増加が土壌炭素含有量を増加させるとは必ずしも限らないことを示唆していると考えられる。これらのことから,リターおよび土壌の炭素含有量に影響する要因,特に土壌化学性との関連を解明する必要があると考えられた。