| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-07 (Oral presentation)
陸上生態系の中でも、個体数や種数の多い土壌生活性のトビムシ群集では、広域スケールでの緯度系列や気候帯間の多様性の違いについて研究されてきた。しかし広域のトビムシ群集を駆動するメカニズムについては殆どわかっていない。本研究では、様々な気候帯にまたがるモニタリングサイト1000の森林サイト19林分の土壌を対象に、トビムシの群集構造(個体密度、バイオマス、種数、種多様度指数、各種形質平均値)に対して、非生物的、生物的諸要因がどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。トビムシの形質として、物理ストレス耐性やハビタット選好に関わるとされる成体体長を種ごとの形質リストから求めた。また、個体ごとの体長をすべて実測し、これらを合計して群集のバイオマスを求めた。非生物要因の気象要因として年平均気温を、土壌特性として土壌pHを用いた。生物要因の微生物要因としてPLFA法により求めた菌類/細菌類(F/B)比を、植物の要因として樹木のLMAの群集平均値を用いた。トビムシ群集の群集サイズや機能形質値などに影響を与える環境変数は、線形回帰モデルを用いてAICが小さいモデルを採用した。年平均気温は、トビムシ群集の個体密度、バイオマス、種数に正の影響を与え、加えてF/B比とLMAはバイオマスに正の影響を与えた。また、気温は成体体長の群集平均値に正の影響を与えた。これらの結果はすべて、気温やpHが低く、高F/B比といった分解活動が抑制される系では、トビムシなどの小型節足動物の現存量が増加し、表層生活性大型個体が増加するという既存研究と矛盾した。群集内の個体の実測体長分布から、寒冷地ほど群集内の大きな個体は小さく、小さな個体は大きくなり、体サイズのレンジが小さくなった。これらの結果から、日本の森林においては、北方ほど体サイズへの安定化選択が働くことで種数が減少することを示唆した。