| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-10  (Oral presentation)

沖縄アリ群集と個体の森林と障害の勾配を通る季節性減少 【B】
Loss of seasonality in Okinawan ant communities and individual species across a forest-disturbance gradient 【B】

*KASSJamie Michael(沖縄科学技術大学), 芳田琢磨(沖縄科学技術大学), 小笠原昌子(沖縄科学技術大学), 諏訪部真友子(沖縄科学技術大学), 吉村正志(沖縄科学技術大学), HITA GARCIAFrancisco(沖縄科学技術大学), FISCHERGeorg(沖縄科学技術大学), DUDLEYKenneth(沖縄科学技術大学), DONOHUEIan(トリニティ・カレッジ), ECONOMOEvan(沖縄科学技術大学)
*Jamie M KASS(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Takuma YOSHIDA(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Masako OGASAWARA(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Mayuko SUWABE(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Masashi YOSHIMURA(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Francisco HITA GARCIA(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Georg FISCHER(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Kenneth L DUDLEY(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.), Ian DONOHUE(Trinity Col. Dublin), Evan P ECONOMO(Okinawa Inst. Sci. Tech. Univ.)

群集の時間変動パターンは生物群集を特徴づけるものであり、環境悪化が続く中ではその保護が重要である。特に、昆虫群集は季節による変動が大きく、生態系の機能やサービスに重要な役割を果たすと考えられる。生物群集の時間変動は人為的撹乱により影響を受ける可能性があるが、その昆虫群集への効果は知見が少ない。そして群集の時間変動の研究は、地理的に温帯に着目したものに偏っており、熱帯や亜熱帯はあまり調べられていない。この知識の偏りを解消するため、本研究では、沖縄本島内の生物多様性モニタリングネットワークを用いて、人為撹乱の勾配を通してアリ群集の時間変遷を調べた。2年間の高密度サンプリングにより、90種を含む120万以上の個体を観察した。その結果、森林被覆率が大きくなると、アリ群集における個体数とその構成の両方の時間変動が大きくなった。また時系列解析により、この変動パターンの違いは、季節の差が比較的小さい亜熱帯の沖縄において、主に市街地では季節性が減少し偶然性が増加したためであると分かった。更に、同種内では森林の方が季節性が高く、変動の種間差は種の特異性ではなく土地被覆によるものであった。よって、都市や農地への開発は昆虫群集の季節性を劣化させる可能性があり、その影響で生態系機能とサービスも劣化させる恐れがある。


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