| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) F03-04  (Oral presentation)

東京湾奥部河川潮間帯における攪乱と回復
Disturbance and recovery in the intertidal zone of the deep river in Tokyo Bay

*桝本輝樹(亀田医療大学), 大越健嗣(東邦大学)
*Teruki MASUMOTO(Kameda Univ. of Helth Sci.), Okoshi KENJI(Toho University)

2019年の台風15号および台風19号により、東京湾奥部の各河川は大規模な増水と表土の流出が起こった。東京湾奥部の多摩川、および江戸川放水路(現在の正式呼称は「江戸川」)でもこの現象が確認されており、潮間帯に生息する動物ベントスの生物多様性への影響が危惧されていた。著者らは2020年春季および2021年春季にコアサンプラーを用いて両河川河口域で動物ベントスの定量採集を行い、主として台風による攪乱の影響とその回復傾向を確認した。

方法:2020年および2021年の春季(5~6月)大潮時に、河口域上流~下流に測点(江戸川放水路4測点、多摩川6測点)を設けてサンプリングを行った。サンプリングには塩化ビニール製の10cm径コアサンプラーを使用し、深さ30cmまでの底土を採取して目合い1㎜のふるいに残った生物を採取し、低温で保存して種同定と個体数測定を行った後、80%エタノールで固定し保存した。多摩川では先行研究に合わせてほぼ0.1mとなるよう13本のサンプリングを行い、江戸川放水路では同様に先行研究にあわせて9本のサンプリングを行った。サンプルは3本ずつ分散して採集し、このサブサンプル同士の比較も検討した。また、両河口域で著者らが過去に行った調査との比較を行い、種構成の変化等などを検討した。。

結果:2020年の両河川では、過去の報告と比較し動物ベントスの生息数及び種構成が大幅に減少していた。過去からの変化として、いくつかの優占種の交代などが見られたほか、多摩川河口では漁獲対象種であるCorbicula japonica(ヤマトシジミ)が減少し、江戸川放水路では模式産地であるStenothyra edogawensis(ウミゴマツボ:エドガワミズゴマツボ)が採取されなかった。2021年には回復傾向が確認されたが限定的であった。


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