| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-01 (Oral presentation)
アリモドキゾウムシCylas formicarius(以下、アリモ)は、甘藷の世界的害虫で日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されている。沖縄県では、不妊化した害虫を野外に大量放飼することで、野生虫の雌雄間の交尾を阻害し、次世代の害虫個体群密度を減少させる防除法である不妊虫放飼法と雄除去法を用いた根絶事業を久米島、津堅島で行い、根絶が達成されました。現在も、再侵入対策として不妊虫放飼が実施されており、週平均54万頭のアリモ不妊虫を生産している。その際に、野生虫と不妊虫を見分けるマーカーとして、野外では極めてまれな褐色虫を大量増殖系統として使用している。大量増殖飼育環境下では、餌が豊富、天敵不在、交尾相手多数、高密度といった野外と異なった特殊な環境に適応進化し、形質が変化することが報告されている。例えば、ウリミバエの大量増殖系統では、野生虫と交尾時刻が異なっていることが知られており、不妊虫としての質(虫質)の低下が懸念されている。そこで、アリモ大量増殖系統の虫質(形態形質や交尾行動、次世代数などの繁殖形質、擬死行動や寿命などの生活史形質)を野外の個体と比較した。その結果、形態形質や交尾行動において両系統間で有意な差はなかったが、次世代数において大量増殖系統の方で有意に多かった。一方で、寿命は有意に大量増殖系統の方で短かった。また、大量増殖系統のオスで擬死する割合が、野生虫より有意に低かった。これは天敵がいない環境下で進化した結果だと考えられる。本講演では、大量増殖飼育という特殊な環境下での形質の変化が不妊虫放飼法の効果にいかに影響を及ぼすかについて考察する。加えて、現在の褐色系統のマーカーとしての質についても検討する。
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