| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-05 (Oral presentation)
外来鳥類による在来鳥類への生態影響が,近年,世界各地で報告されている.在来鳥類の減少は生態系サービスの減少につながるため,外来鳥類の対策は喫緊の課題とされる.しかし,これらの鳥類を防除するにあたっては,在来鳥類への影響に配慮した,種特異的な手法の開発・検討が必要となる.ソウシチョウ Leiothrix lutea はわが国で特定外来生物に指定されており,侵入各地で在来鳥類の群集構造を変化させる可能性が危惧されている.本種の防除を検討する上で,動物が危機を感知した際に発する音声であるアラームコール(AC)に注目した.本研究では,ソウシチョウの特異的な管理・防除方法の開発を目指し,本種に対して2種類の異なる危機(人間,捕食者(ヘビ))を設定し,それらに対するAC(人間:ACh,ヘビ:ACs)を録音し,音声を比較した.あわせて,各種の音声(ACh,ACs,さえずり,ホワイトノイズ(コントロール))に対する同種他個体の逃避行動についても調査した.調査の結果, 2種類の音声(ACh,ACs)間で明確な違いが確認された.各音声に対する他個体の逃避行動について,種類を問わずAC(ACh,ACs)に対しては応答を観察したほとんどの個体が逃避行動を示したのに対し,さえずりとホワイトノイズに対してはまったく逃避行動を示さなかった.なお,逃避方法にはAC間で違いがみられ,AChに対する周囲の個体の行動は,音源から徐々に移動しつつ距離をとり,最終的に飛び去るというものであったのに対し,ACsに対しては発声直後にすべての個体が飛び去るなど,警戒対象の違いに応じた群れ行動が確認された.以上より,ソウシチョウのACには,警戒対象を問わず同種他個体を逃避させる効果があることが明らかとなり,警戒対象に応じてACへの応答を変えることが示唆された.今後は,本種のAC に対する他種の鳥類の応答について評価することで,種特異的な管理・防除手法の可能性を探る.