| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-06  (Oral presentation)

鳥類における他言語理解:ヒガラはシジュウカラの警戒声からヘビの姿を想起する
Recognition of other species' language: Coal tits retrieve a visual search image of snakes from Japanese tits' alarm calls

*鈴木俊貴(京都大学白眉センター)
*Toshitaka SUZUKI(Hakubi Project, Kyoto Univ.)

「dog」と聞いて犬を思い描くように、単語から指示対象をイメージする能力はヒトが他言語を理解する上でも欠かせない。動物においても他種の音声(例えば警戒声)に特定の行動を示す例が知られているが、それにイメージが関与するか明らかになっていなかった。そこで、本研究では、ヒガラ(Periparus ater)がシジュウカラ(Parus minor)の警戒声に反応する際、その指示対象(捕食者)をイメージするか認知実験により検証した。実験では、あらかじめ録音しておいたシジュウカラの音声をヒガラに聞かせ、それと同時に紐を使って小枝を動かし呈示した。その結果、ヒガラはシジュウカラが発した「ヘビ特異的な警戒声」を聞くと、ヘビのように地面や幹を這わせた小枝に接近することが確かめられた。一方、小枝の動きがヘビに似ていない場合や他の音声(ヘビ以外への警戒声など)を聞かせた場合は、小枝に近づくことはほとんどなかった。つまり、ヒガラはシジュウカラの「ヘビ特異的な警戒声」を聞いた時にだけ、ヘビに似た物体の検出を特異に高めることが明らかになった。これは、ヒガラが「ヘビ特異的な警戒声」からヘビの探索イメージを想起し、小枝をヘビと見間違えた結果であると解釈できる。音声から指示対象をイメージする能力は、ヒトに固有な能力と考えられてきた歴史があり、動物における証拠も同種内のコミュニケーションの1例(シジュウカラ)に限られていた(Suzuki 2018 PNAS)。本研究は、動物が他種の音声を認識する際にも、同様の認知能力が働いていることを初めて示した成果となった。


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